国際オリンピック委員会(IOC)は29日、アテネ五輪陸上男子
ハンマー投げで優勝したアドリアン・アヌシュ(ハンガリー)をドーピ
ング(禁止薬物使用)規定違反で失格とする裁定を下し、2位
の室伏広治(ミズノ)を金メダルに繰り上げることを決めた。これに
より、今大会の日本の金メダル数は16個となり、史上最多だっ
た1964年東京大会に並んだ。
室伏は決定を受けて、急きょ当地のメーンプレスセンターで記者
会見。緊張した面持ちで「友人(アヌシュ)がこのような形で検査
を通らなかったことを残念に思う。金メダルという形で結果を残せた
ことはうれしい」などと語った。
IOCによると、アヌシュは五輪開催中に競技外検査と、22日の
ハンマー投げ決勝直後に計2度の検査を受け、いずれも禁止薬
物の陽性反応は出なかった。だが、その後の分析で2つの尿サン
プルが異なる2人の人物のものと判明。尿採取の際に不正操作
をした疑いが浮上したため、アヌシュの再検査を決めた。
しかし、既に帰国していたアヌシュは27日の期限までに再検査
を拒否。この日、当地で開かれた事情聴取も体調不良を理由に
欠席した。IOCはアヌシュの代理人による事情聴取を経て、理事
会で検討の上、失格処分を決めた。
IOCは五輪選手村開村から閉会式までを五輪期間と定めてお
り、選手に対しては、いつでも競技外検査を受ける義務を課して
いる。日本オリンピック委員会はIOCに事実関係の調査を要望し、
室伏は帰国を延期して、アテネにとどまっていた。
日本の陸上男子で金メダルを獲得するのは、1936年ベルリン
五輪以来68年ぶり5個目で、投てき種目では男女を通じて初め
てとなる。
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