東芝とマイクロソフトは6月27日、両社の持つデジタル家電とPC分野の技術を相互に持ち寄り、デジタル家電やPCの開発と普及を目指して協業を強化すると発表した。都内で行われた記者会見には来日中のビル・ゲイツCSAが登壇し、Windows CEベースのHD DVDプレーヤーの開発を検討することなどを明らかにした。
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協業のポイントは主に3点。まずHD DVDの分野では、Windows CEの技術を使用したHD DVDプレーヤーの開発を「具体的に検討する」(東芝の西田厚聰社長)。あわせて、DVDフォーラムのインタラクティブ機能仕様である「iHD」を協調して強化する。
「Windows CEのような組み込みソフトウェアがCE(コンシューマーエレクトロニクス)製品をどう使いやすくするか? またどのようにPCとの接続を実現するかなど、さまざまな議論をしている」(ゲイツ氏)。
2つめは、東芝のハードウェア技術とMSのソフトウェア技術を統合した“革新的なモバイルPC”を市場に提供するため、継続的に共同プロジェクトを進めていくこと。そして3つめは、4月に両社が締結した特許クロスライセンスの相互利用を促進すること。「東芝にとっては、主に映像とPC分野が対象になる」(西田氏)。なお東芝は、年末に発売予定のHD DVDプレーヤーにIntel製CPUとIntel 854チップセットを採用することを明らかにしている。
発表の多くは既に明らかになっていたことだが、ゲイツ氏が来日したタイミングで記者会見を行った背景には、Blu-ray陣営に対するデモンストレーションという意味が多分にありそうだ。質疑応答でBlu-rayとの統一交渉に話が及ぶと、西田氏は「次世代DVDは5〜10年という長いスパンのもの。現在の技術レベルで決めて良いのか? という部分もあるが、0.1ミリ層を前提にされると話はしにくい」とチクリ。その上で、「PCやDVDレコーダーに積極的にDVDマルチドライブを採用してきた事実からも分かるように、東芝はあくまでユーザーメリットに重きを置いている。今後も統合の努力は続けていこうと思う」と話し合いの余地を残した。
またゲイツ氏も、MSの立場が“中立”であり、「この方向性(HD DVD)だけを追求しているという立場は取っていない」としながらも、「iHDの開発にはマイクロソフトも積極的に関わってきた。これが広く展開されることを期待している」としてCE分野に深く食い込みたい同社の意図を明確にした。タッグを組んで“揺さぶり”をかけるMSと東芝に対し、ソニーや松下などBD陣営がどう出るか、今後の展開に注目が集まりそうだ。
「今回の発表は、HD DVDの拡張性と将来性にとって、たいへん意義のある取り組み。(BD側に)どういうインパクトを与えるのかはわからないが、HD DVD側には良いサポートだと思う」(西田氏)